「Etomite」 - MODXの前身となったCMS

最終更新日:2011年8月1日 shortlink:http://modx.jp/?id=565

MODXは最初からMODXとして開発が始まったわけではなく、2003年から2004年にかけてオランダのアレックスという技術者が作ったCMS「Etomite」がベースになっています。カメラマンである友人のために作ったもので、パソコン操作に慣れない人でも扱えるように隅々まで配慮されていました。今回はそのEtomiteの話です。

EtomiteはこんなCMS。

日本語ローカライズ版Zen Cartでおなじみ、アークウェブ社の上記ブログ記事が参考になると思います。

Etomiteの管理画面。左側ペインのサイトツリーなど、現在のMODXと共通する部分が多いことが分かります。基本的な仕組みや考え方はMODX(特にEvolution)とほとんど同じ。MODXの管理画面のデザインも、Ver0.9.2まではこうでした。

MODXでもおなじみ、サイトツリーのコンテキストメニュー。ツリー上の任意のページを右クリックすると表示され、このメニューを使えば、記事の管理に関してはひととおりの操作ができます。このようなリッチなGUIの発想は、当時のCMSには存在しませんでした。

余談ですがこのスクリーンショット、各所に「Phase」という文字列が見えます。これは「Etomite」というCMS名が定まる前の名前です。商標上の問題があって「Phase」という名前が使えなくなり、変更することになりました。

アレックスがEtomiteの開発を始めたのは2003年。当時オープンソースCMSとしてはPHP-NukeMamboが世界的に全盛を誇っていました。同じ頃、日本国内ではXoopsが支持を得ています。Mambo・Xoopsは拡張機能やデザインテンプレートが豊富に配布されており、誰でも簡単に高機能なサイトを構築できることが魅力でした。

MamboやXoopsを使えば、

などを簡単に追加・変更できます。ナビゲーションやパン屑リストは、何も考えなくてもシステムが自動的に出力してくれます。デザインの変更も、着せ替え感覚で簡単です。

また、その一方で、MovableTypeやNucleusなどのブログ運用システムの高機能化が進み、工夫すれば汎用CMSと同等に使えるようになってきました(※WordPressがメジャーになるのはもう少し後)。ブログはPHP-NukeやXoopsと違い、デザインのカスタマイズがしやすく、コンテンツ構造も単純なことが特徴。多くのデザイナーが、ブログを使ってサイトを組み立てるようになりました。

アレックスは当時普及していたPHP-Nukeやブログのどちらにも不満がありました。多機能過ぎるシステムは扱いづらいし、ブログもやはりブログなので流用でホームページを作るのも無理がある。普通にホームページを作るだけのソフトウェアが欲しいのに、Dreamweaver以外で使えそうなシステムが存在しない。

捕捉

当時普及していたCMSに対してアレックスが感じていた不満は、具体的には以下のようなものでした。

  • デザインワーク上の制限が多い。既存の配布テンプレートに着せ替えるのは簡単だが、細かい部分をカスタマイズできず、雑なデザインのサイトになりがち。
  • 3カラムレイアウトしか選べないことが多い。
  • インストール作業が難しい。
  • アップデートはもっと難しい。
  • たった1ページ追加したいだけなのに、管理画面を見ただけではどう操作すればいいか分からない。
  • カテゴリーが不要な記事でも、必ず何らかのカテゴリーを設定する必要がある。
  • システムが巨大過ぎる。普通のユーザには縁がなさそうなモジュールが多過ぎる。
  • 独自のルールが多く、慣れるのに時間がかかる。
  • Smartyを使えば簡単という話もあるけど、それはそれでいろいろ面倒。

ユニバレという言葉がありますが、同じように、CMSで作ったサイトはそうであることがバレバレな見た目になってしまいます。どんなに手間をかけてカスタマイズしても、XoopsやNucleusで作ったことが見た目でバレてしまいます。

専門のスキルを持つ人が、持っているスキルを生かしてサイトの設計と運営に関われるCMSが当時は存在しませんでした。手軽に見えるブログでも、htmlやphpまたは独自タグの扱いに関して総合的なスキルが必要なので、できればやっぱりそのへんはラクをしたい。

ルールの理解を求めない、今すぐ使えるCMS

そこで、直感的にサイトを組み立てられるツールとしてEtomiteを作りました。

Etomiteは、コンテンツ・デザイン・ロジックが明確に分離されており、コードを書く作業自体にはCMS独自のルールを必要としない仕組みになっています。htmlの読み書きができる人なら誰でも簡単にテンプレートデザインの調整ができますし、PHPプログラミングができる人なら、手頃な拡張機能をいくつでも自由に自作できます。また、デザイナーはプログラミングを理解する必要はありませんし、プログラマーもHTMLやスタイルシートの扱いに習熟している必要はありません。画期的なアイデアでした。

Etomiteは、htmlコードやphpコードを自由に盛りつけてサイトを作るための、器のようなイメージを持つCMSです。このプレーンな発想のおかげで、CMSを使っていることを感じさせないサイトを作ることができます。これらの特長はMODXではさらに洗練された形で引き継がれています。

早すぎる衰退とMODXの登場

最初は友人のために黙々と開発していましたが、オープンソースコミュニティ参加者の声援を受けて、同年春にライセンスをGPLに変更し、オープンソースCMSとしてデビューしました。Etomiteは、Mamboやブログとはタイプが異なる第3のCMSとして注目を浴びることになります。

その後3ヶ月ほどの間に、アレックスの元にはいくつかの儲け話が舞い込んだようです。しかし当時のオープンソース文化はマネタイズに関して気難しい見方があり、相当深く悩んだ様子が伺えます。テンプレートのフッタ部分へのクレジット表記義務を思いついた時は、ユーザからの反発を受けました。それはすぐに撤回されました。当時、「Etomiteからクレジットの強制出力機能を無効にする方法」「クレジット表記は強制なのか」などといった話が各所のブログなどで話題になっていたことも記憶にあります。

アレックスは収益が欲しかったわけではないけど、何らかの形で手応えが欲しかった。どういう形でその手応えを得たら自分は満足できるのか、思いつくことができなかった。そしてアレックスは失望し、春のデビューから半年たったくらいでしたが、開発から離れることを宣言しました。このへんのやりとりはwebarchiveに情報が残っていますので、興味がある人は追跡してみてください。

MODXが現れるのは、それから数カ月後のこと。もともと、Etomiteにテンプレート変数やウェブユーザなど多数の新機能を追加する「MOD」がユーザの間で自発的に配布されており、これらの機能を取り込んでひとつのCMSとして完成させようという動きが水面下でありました。MODの数がいくつかあったので、これらの作者(主にレイモンド氏)に敬意を示して「MODx」という名前がつけられました。

余談になりますが、WordPressの大躍進が始まるのは、それから3年後。躍進が始まる直前にはWordPress Japanの閉鎖といった大きな事件もあり、人ごととは思えない荒い展開を静かに見守っていた記憶があります。当時はコミュニティの人的リソースが頼りでしたし、属人化が故の誤解やトラブルもありましたが、あの頃にGitHubのような割り切って開発に参加できるツールがあったら、また違う未来があったかもしれません。WordPressはGitHub使ってませんが・・・

※Etomiteの原作者アレックスは、Etomiteプロジェクトを離れて新しいCMSの開発に着手しました。いくつかの試作をリリースした後、frumlとしてベータ版がGPLライセンスで配布されています。Etomiteはディーンとラルフの2名がプロジェクトを引き継ぎましたが、2013年11月に解散。ソースコードはしばらくの間SourceForgeに収録されていました。

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  • KAGOYA
  • ASP at AKIHABARA Japan
  • CMS AWARDS 2007 Winner
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